宅配の思い出です、怖い怖い思い出、これは一度は書いて置こうと思った出来事です。
十数年も前の話です、ある、高級マンションのお客様から、保管の品物を届けて欲しいと電話が入りました。上野毛の多摩川を見下ろせる高級マンション、私は品物をそろえて伺いました。
マンションに着いた時点でお客様に電話を入れます、そして更にマンション入口でホーンを鳴らして、中に入ります。
そうしたら、エレベーターがやけに混んでいて、マンションの住人と一緒にエレベーターに乗るのを遠慮した私、お客様は二階なので非常階段で行こうと思いました。ちなみに、このマンションへのお届けは初めてでした。
☆これはこのマンション内では有りませんが、こんな感じでしたかエントランスは、奥の方にエレベーターがあり、その奥に非常階段が有りました。
非常階段は、エレベーターの奥、マンションの外れに有りました。私はその鉄の扉を開けて、これから起きることを予想もせずに、非常階段スペースに入りました。
そして入った途端、カシャーンとドアの閉まる音がしたのです、その音に非常に嫌な感覚を覚えて、まさか!!と思ったのです。
しまった~!!、そうです、そのドア、内側からは開かないのでした。
☆こんな鉄扉でしたか、記憶です。こいつが、カシャーンという感じで閉まったのです。そしてこんなに明るくは有りませんでした。
階段は非常灯がついては居ましたが、ほとんど真っ暗で、試しに二階に上がりドアを開こうとしたのですが、やはり駄目でした。
ぞーっとしました、この階段、ここの住人はほとんど利用はしていないのだろうなと、そうなると誰も助けてはくれない、管理人室からは遠いし、ああそうだ電話だと、ガラ系の携帯を取り出して、電波が立っているか見たのでしたが、一本も立っていませんでした。
頼るべきは、これからお届けするお客様が気付いてくれるか、でした。でもなあ、待ち焦がれている訳でもないだろうし、積極的に探してはくれないだろうと悲観的でした。
ドアは開かない、携帯は繋がらない、さあどうしよう、私がこの非常階段に閉じ込められていることは誰も知らないんだと思うと、腹の底から冷たいものが上がって来ました。
私は最後の手段で、鉄の扉を叩くことにしました。そして大きな声を張り上げながら、ドンドンと扉をたたき続けたのです。
手が痛くなり始めて、声が枯れ始めて、でもたたき続けました。
頭の中では、このまま発見されなかったらどうなるだろう、などと過ぎりました。トイレは?、外に停めてある車は?、またまた会社では私が帰ってこないと思うだろうなと、あいつやはり失踪したかなんて思うだろうかと、頭の中を妄想が駆け巡りました。
30~40分くらいたたき続けたでしょうか、もうあきらめかけた時に、遠くの方から(遠くからのように聞こえた)、どうしました?どうかされましたか?と、声が聞こえたのです。
ああ、助かった!!
私は一層激しくドアを叩きました、ここです!!、この中に居ます!!と。
おそるおそるドアが開きました、そうして、ああ!!と、私の存在を確認してくれました。このマンションのご住人でしょう、上品な奥様でした。
ここ、入られたのですかと、ここ入ると外に出られなくなるんですよ、何だか防犯の為だと、私達説明されています。だから、ここの人達は誰も近づかないのですよと。
でもね、遠くで何かを叩くような音が聞こえて、来てみたのです。
いや~、ありがとうございました(心の中では救世主に手を合わせる想いでした)。ここのお二階のお客様にこのお洋服をお届けしに来たクリーニング屋です。本当に助かりました、ありがとうございました。私は何度も何度もペコペコと頭を下げました。
私は助かりました、そしてお礼もそこそこに、お届をせねばとお客様のお部屋に伺いました。
大変遅れて申し訳ございません、〇〇クリーニングです、と。お客様は何の疑問も持たずに、ああご苦労様と、品物を受け取ったのです(30分以上も遅れたのに)。
怖かった~、マンションの住人には、非常階段のドアのことは知らせれていたが、出入りの商人には知らされていない、それはそれなのかと思いながら、念の為に管理人室に寄ったのですが、巡回中との立て札、もう帰ったんだと、いろいろ諦めました。
俺だけじゃないよな多分、あそこに閉じ込められたのは、怖い想いをした人達はきっと沢山いるんだろうなと、帰りがけにその高級マンションを見上げながらそんな想いを広げたのでした。
教訓 気を付けよう!! 初めての恋と、初めてのドアには(笑)